鼻マスクの人工呼吸器を使用されている患者の顔形状を3Dスキャナーや3Dプリンターなどの技術を用いて、個人毎のマスクを提供することで、患者の日中や就寝中の長時間使用で発生する不快感などを改善し、生活の質向上に繋げていくことを目的として、リバースエンジニアリングによるアタッチメント部分の研究を行っています。
現状
先天性ミオパチー等の筋神経疾患で呼吸器系に障害が発生した場合に、自発呼吸ができなくなり人工呼吸器による換気補助を必要とします。これまでは気管切開という侵襲性の高い換気補助技術が使われていました。最近では、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)という侵襲性の全くない鼻マスクから換気補助を行える技術があり、生活の質向上に繋がっています。しかし、既存の鼻マスクで常時使用している患者にとっては、マスクと顔のあたる部分がかぶれたり、顔形状にあわず快適な睡眠が取れなかったりがあります。
技術
リバースエンジニアリングとは、スキャナーなどで実物を計測し、そのデータを元に3次元CAD形状を作り出し、新たに複製や応用物を作り出す技術です。現在、レーザースキャナーで人の顔形状を計測し、その情報を元に3次元CADで市販のマスク形状と顔形状の間をつなぐアタッチメントやそれを製作するための型を設計し、3Dプリンターで作られた樹脂製の型にシリコーンを流し込み、固めるという方法で個人毎に異なるアタッチメントを手軽に製作する方法を開発しています。
展開
このプロジェクトにより、人工呼吸器メーカーでは、対応が難しいと考えられる個人毎に異なる顔形状に最適なマスクアタッチメントを、比較的手軽で安価に製作できるようになります。顔とマスクの装着部からの空気漏れなどの問題を解決するとともに、複数の異なる大きさや形状のアタッチメントを取り換えられるようにすることにより、かぶれや痛みの問題を緩和することに繋がると考えています。